日本ディープラーニング協会(JDLA)
ご挨拶 ディープラーニング協会は、ディープラーニングを事業の核とする企業が中心となり、ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげていこうという意図のもとに設立されたものです。 2012年ごろから急速に進展してきたディープラーニング技術は、画像認識や音声認識等で大きな性能の飛躍を遂げています。機械にさまざまな状況が「見える」ようになるため、ものづくりとも相性がよく、また、さまざまな労働力不足の問題を解決する可能性があるなど、日本全体にとって大きなチャンスであると考えます。諸外国のディープラーニングに関する取り組みは急速に進んでいます。日本がグローバルに戦える体制を整えていくには、早期に「ディープラーニング産業」を拡大する取り組みが必要と考えます。 そのために、まず重要なのは人材育成です。ディープラーニング技術を担う人材、また、ディープラーニングの可能性と限界を正しく理解し、うまく事業に活用する人材の両方が必要です。ディープラーニングは決して万能なわけではありません。得意なデータや不得意なデータがありますし、ディープラーニング以外のさまざまな機械学習技術を使うほうが有効な場合も多くあります。人工知能、機械学習、ディープラーニングに関する俯瞰的な理解をもった人材を、特に、ディープラーニングを活用したいと考えるユーザ企業のなかで増やすことが、産業全体の進展にとって大変重要だと考えます。同時に、ディープラーニングを用いたシステムの開発をできる人材も大きく不足しています。さまざまな領域のエンジニアや研究者、学生などに技術を習得してもらえればと思っています。 人工知能の分野は、良くも悪くも、「人工知能の定義がない」ということに由来する特徴があります。さまざまな技術を取り込む寛容性がある一方で、なんでもかんでも人工知能と言ってしまうことができ、過剰期待を生みやすい性質もあります。だからこそ、人工知能の分野においては、ある一定の知識レベル・技術レベルの基準を作るということが大変重要と考えます。本協会では、初期の重要な活動としてディープラーニングに関する資格試験を実施したいと考えています。ユーザ企業やエンジニアが、一定の知識レベルを担保することで、地に足の着いた議論や事業開発ができるものと考えています。 それ以外にも、「学習した結果としての製品」が社会のなかで広く使われるためには、法制度やプライバシー、倫理面の問題など、さまざまな議論が必要です。ディープラーニングを提供する企業と社会が、国も巻き込みながらしっかりと議論していくための場を、協会が提供することができればと思っています。 本協会は、その設立にあたって、ディープラーニングを事業の核とする企業、特にスタートアップが中心になって、約1年ほど議論を重ねてきました。協会を設立した意図は、日本全体の産業競争力を高めるために、ディープラーニングを中心とする産業を大きくしたいというところにあります。我々は、ディープラーニングという技術が、例え今は機械学習の一手法に見えていたとしても、大きな可能性をもった技術であり、今後の人工知能の発展、そして日本の産業において重要な基盤技術になるという信念を持っています。本協会の活動に多くの企業の方々、技術者や研究者の方々が、ご賛同、またご参加いただければありがたいと思っています。 一般社団法人 日本デイープラーニング協会 理事長 松尾豊